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 川柳句集「命のほうび」吉村久仁雄著          
          さて今日の命のほうび番茶飲む
                  平成17年2月19日付け朝日新聞「朝日なにわ柳壇」最優秀句

著者 吉村久仁雄
(よしむら くにお)
略 歴
昭和22年(1947年)大阪市生まれ
昭和46年(1971年)広告会社に入社
平成14年(2002年)広告会社を早期退職
平成15年(2003年)羽曳野市の市民活動推進委員
平成20年(2008年)NPO法人「中小企業サポート隊」副理事長
平成 6年(1994年)「朝日なにわ柳壇」初投稿
平成10年(1998年)「はびきの市民川柳会」入会
平成14年(2002年)「朝日なにわ柳壇」今年の十秀
平成15年(2003年)「川柳塔」誌友
平成16年(2004年)「朝日なにわ柳壇」今年の十秀
平成17年(2005年)第六回文学ルート川柳佳作賞
平成17年(2006年)「朝日なにわ柳壇」今年の十秀最優秀
平成20年(2008年)「川柳塔」同人
平成21年(2009年)「朝日なにわ柳壇」百句入選
本の内容  川柳句集「命のほうび」
さて今日の命のほうび番茶飲む
              (さ て)
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気まぐれの愛よりエサが欲しい犬
             (気まぐれ)
少し鬼少し仏で選ばれず
             ( 鬼 )
 発行日  平成21年9月10日
著  者  吉村久仁雄
発行者
         〒583-0861
          大阪府羽曳野市西浦6-4-21
          電 話 072-957-2575
 印刷所   美研アート
 四六版全141ページ/頒価 1,000円(消費税込み)
 著者へ直接注文OKです。
 ご注文・お問合せはEメールkunio-y@syd.odn.ne.jpへどうぞ
お祝いの言葉
「命のほうび」のご上梓、まことにおめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 句集のタイトルとなった
  さて今日の命のほうび番茶飲む
は、平成十七年二月十九日付け朝日新聞「朝日なにわ柳壇」にトップに選ばれた句です。橘高薫風先生の二十五年にわたる最後の選でした。当時先生は二度と帰ることのない入院をされる直前で、渾身の力を振り絞っての選であったことは、想像に難くありません。その後三月五日掲載分からの選を私が引き続き、先生は四月二十四日、永遠の旅に立たれたのでした。
 その年度末に一年間の入選句の中から「今年の十秀」を選ぶ時、私はためらわずこの句を最優秀句としました。「命のほうび」として、山海の珍味ではなく番茶であるところが何とも好もしく、句の中から馥郁と香が漂って来るように感じたからです。
 今回改めてこの句を味わい、先生の選句眼に感じ入りました。そして「命のほうび」というタイトルの句集上梓を、草葉の陰でどんなにか喜んでおられるだろう、と想像すると胸が熱くなります。
 久仁雄氏と私は、これまでに二回句会でお会いしています。その時、ダンディーで温和、自由業に近い仕事をされている方という印象を受けました。果たせるかな、時代の先端を行く広告会社に勤務されていたと聞き納得したものです。で、てっきりコピーライターだと思い尋ねましたら見事外れで、他の分野に携わっておられたのでした。
 それを尋ねた理由の一つは「なにわ柳壇」の初入選の句
   旅にあり朝刊ぬきの陽が昇る
が、そしてそれに続く句が初心者とはとても思えないほどの力量があったので、普段から言葉を操っておられたとしか考えられなかった訳です。
 理由の二つ目は、実に視野の広いこと。世界情勢から小説・温暖化・社会などと多岐にわたっています。
   開放日スーチンさんが書く日記
   話の穂つぐに失楽園を出し
   ヤドガリに宿貸す貝のエコロジー
   オゾン層もう放蕩を包まない
   飼い犬へ格差社会を言い聞かす
また、旅やマンガを心から楽しんで居られる様子は、
   烏賊裂くとストーブ列車友ができ
   年金の旅は足湯と蕎麦めぐり
   樹海からトトロもののけ姫の声
   六十路超えあしたのジョーは燃え尽きず
などの句で窺い知ることができます。
 こうして、纏められた百句を何度も精読すると、毎週約千五百句の中から三十句という厳選を経た入選句だけあって、どの句も非の打ちどころありません。毎週出される課題を素直に捉えた、自由自在な遊びが伝わります。
 一方、自選二百句は楽しんでおられるあちこちの投句からのものです。昨年から同人として所属して下さっている川柳塔社の「水煙抄」「川柳塔」欄は自由吟(雑詠)で、原則として身辺を詠むことになっています。
 その中で一番身近な存在である奥様を詠んだ句は、出色の出来のものが多くさすがと思わされます。
   生き様に妻を除くと僕がない
   コンビニの小さい秋を妻と食べ
   なるようになって清しい共白髪
   眼差しが保護司のようになった妻
などに円満な日々の暮らしを窺い知ることが出来、次の句には心にほのぼの暖かいものが湧きあがるのを感じました。
   宝くじで言えば一等賞の妻
 時には奥様に対して辛辣な句がありましたが、これは世の夫族に往々にして見られる愛情の裏返しで、含羞の人である証しと解釈しました。
 いま、投句を中心に川柳を楽しんでおられるようですが、出来れば積極的に句会に出席され、同好の士との接触の中で世界をなおこの上に広げられ、より一層川柳と親しまれますよう希望してやみません。
 田辺聖子著「川柳でんでん太鼓」に触発された川柳への情熱をどうか持続し続けて下さい。そして「命のほうび」を通過点として、これまで同様心の底に真っ直ぐ響いてくる久仁雄川柳を発表して行かれるよう大いに期待しております。

    平成二十一年八月
                                   川柳塔社理事長
                                      西出 楓楽    
川柳句集 命のほうび
目   次
お祝いの言葉・・・・西出 楓楽・・・・・・・・
「朝日なにわ柳壇」入選百句・・・・・・・・・
自選二百句・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138

あとがき
 「朝日なにわ柳壇」への投稿というかたちで川柳を始め、入選という喜びを百回味わった記念として、句集を出すことにしました。読まれた方が少しでも楽しんでいただければ、望外の喜びです。
 「川柳でんでん太鼓(田辺聖子著)」を読んだことがきっかけです。手と足をもいだ丸太にしてかへし(鶴彬)。思わず姿勢を正しました。川柳のなんという懐の大きさ、深さ。そしてすぐ、私も川柳に挑戦しようと思い、なにわ柳壇に投稿を始めました。十五年前のことです。
 興味はありましたが、川柳を作ったことも、勉強もしたことがありません。いつか遠い日の入選を夢みてのことでしたが、四回目に入選、しかも上位句として評まで付いています。興奮がさめないなか、次の週にも入選。
 ビギナーズラック以外のなにものでもありませんが、これですっかり川柳の虜になりました。以来、力不足からなかなか入選しませんでしたが、東京赴任のときも投稿を欠かしたことはありません。ものぐさな私にとって、こんなに長く続けていることを密やかな自慢にしています。
 この間、なにわ柳壇の「今年の十秀」に三回選ばれるという幸運に恵まれました。特に平成十七年には橘高薫風選で週のトップ句となり、西出楓楽選で今年の十秀の最優秀句となりました。楓楽氏によれば、薫風氏の二度と帰ることのない入院前の最後の選とのことです。なんという因縁。直接お目にかかったことも、お教えいただいたこともありませんが、薫風氏には百句のうち三十四句を入選させていただいています。私の川柳の「心の師」としてこれからも変わらず思い続けることでしょう。
 「朝日なにわ柳壇」入選百句に加え、自選二百句を合わせて載せています。「川柳塔」などの川柳専門誌や、川柳大会での入選句の中から自選しました。この機会に私の川柳のこれまでの軌跡を自分自身のためにも残しておきたいという思いからです。つたなくて恐縮ですが、御笑覧いただければ幸いです。
 「朝日なにわ柳壇」選者の西出楓楽川柳塔社理事長には、誠に過分なお祝いの言葉をいただき、心よりお礼申し上げます。思いもかけず私の句が、薫風先生と楓楽先生の絆の一つになったことを大変光栄に思います。そして暖かい励ましの言葉が心に沁み入ります。本当に有り難うございました。
 川柳に初心で臨んでいた頃の高揚感を今一度思い起こしながら、人間陶冶の詩としての川柳になお一層努めたいと決意を新たにしているところです。

     平成二十一年八月吉日
                                        吉村久仁雄
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