21今来むと　いひしばかりに　長月の 　有明の月を　待ち出でつるかな 素性法師	22吹くからに　秋の草木の　しをるれば 　むべ山風を　あらしといふらむ 文屋康秀	23月見れば　千々に物こそ　悲しけれ 　わが身ひとつの　秋にはあらねど 大江千里	24このたびは　幣もとりあへず　手向山 　紅葉の錦　神のまにまに 菅家（菅原道真）	25名にし負はば　あふ坂山の　さねかづら 　人に知られで　くるよしもがな 三条右大臣藤原定方

26小倉山　峰のもみぢ葉　心あらば 　今ひとたびの　みゆき待たなむ 貞信公藤原忠平	27みかの原　わきて流るる　いづみ川 　いつみきとてか　恋しかるらむ 中納言兼輔	28山里は　冬ぞさびしさ　まさりける 　人目も草も　かれぬと思えば 源宗千朝臣	29心あてに　折らばや折らむ　初霜の 　置きまどはせる　白菊の花 凡河内躬恒	30有り明けの　つれなく見えし　別れより 　暁ばかり　憂きものはなし 壬生忠岑